【銀剣のステラナイツ】シナリオセッティング『聖夜断頭台』

シナリオセッティング『聖夜断頭台』

――メリークリスマス! あなたの今日が素敵な日でありますように!

「……シカシ、ヤハリコレハ、ギロチンニカケルベキダロウ……」

■シナリオセッティング前提

▼監督が参加者に事前に周知しておくべき事
・このシナリオセッティングでは、新規作成のペア(【勲章】0個のペア)の9割はロストすること
▽補足:ペアがロストしない条件
 このシナリオでは、ステラバトル終了時点で【勲章】を6個得ていないペア(あるいはその【勲章】を使用しなかったペア)のブリンガーは、自動的にロストとなる。
 初期作成で【勲章】を6個得るためには、戦闘に勝利することで得られるシナリオセッティングで設定された【勲章】1個を含め、『銀剣のステラナイツ』P.122の「勲章がもらえる条件(【授与条件1~5】まで)」を全て達成しなければならない。
▼使用舞台
使用舞台の指定はありません。
▼PC作成
 PC(ステラナイト)を作成する際、「ブリンガー/シース」に属性を付与します。
 あなたのステラナイトが「ブリンガー」であれば、『聖夜、断頭台にて処刑される罪人』という属性が付きます。あなたのステラナイトが「シース」であれば、『ペアが処刑されるまでの間、面会を許された者』という属性が付きます。
▽補足:【ブリンガーの罪状】について
 このシナリオセッティングでは、ブリンガーは処刑されるだけの罪を犯した者として扱われます。
 つまり「冷たい牢獄のなかで死刑が執行される聖夜まで待つことしか出来ない存在」です。さて、それではブリンガーはいったいどれほどの罪を犯したが為に、このような事態に陥ったのでしょうか?
 死刑のある犯罪といえば現実においても幾つか思いつくものがあります。例えば内乱罪や殺人罪、航空機のハイジャックによる罪などは該当するでしょう。原始的な内容になれば、国(ステラナイツ世界観的には階層群)が定めた法よりも、もっと小さな個人や集団により裁定された死刑を含んでも構いません。大事なことは、「処刑が執行されれば、ブリンガーは断頭台にかけられて確実に死ぬ」ということです。
 つまり「ブリンガーが処刑される理由(罪状)は、自由に考えて良い」のです。それはもちろん、『冤罪であるのに死刑と裁定された』『シースの犯した罪を、ブリンガーが被った』、伝奇的なものでしたら『ある家に双子が生まれた場合、一定の年齢になるとそのどちらかが家の繁栄を願う儀式の為に断頭台にかけられる』などでも構わないということです。
 但し現実では、罪を犯しても国によっては死刑制度がなかったりもしますし、死刑には適用基準があり死刑にならない場合もありますが、このシナリオセッティングでは細かい部分を省き、「ブリンガーの死刑は裁定され、後は執行の日を待つのみ」とします。

■シナリオセッティング概要

 このシナリオセッティングでは、第一章で「絶望のなかで処刑を待つペア」を、第二章で「絶望のなかで一縷の希望を見出したペア」を描写します。
 必死の事態、牢獄の内と外、一縷の希望――そのような状況におかれたペアは、普段とは違った関係性を描くこととなるでしょう。

■セッションの構成

 監督は以下のタイミングで、今がどんな時期なのかを提示してください。
▼第一章「鉄格子の外に綿雪が降る」
【描写】
12月24日、クリスマス・イヴの朝は綿雪が降っている。
この天候は明日まで続くらしく、世間はホワイトクリスマスに対する喜びの声であふれている。その歓声は、何処かから聞こえてくるクリスマス・キャロルの響きや幸せなひとたちの哄笑として、きみたちのいる面会室(牢獄)にまで届いていた。
――この喜びの声が聞こえなくなる頃に、きみたちは別たれる。
処刑は今日の終わりに執行される。明日を二人で見ることは叶わない。
面会室の硝子窓(牢獄の鉄格子)を挟み向かい合うきみたちは、断頭台までの間、何を話すのだろう?

【解説】
 ブリンガーの処刑が執行される日の朝です。ブリンガーとシースは面会が許されていますが、外を一緒に出歩くことは不可能です。出来ることは会話だけです。また、面会する場所によっては触れ合うくらいは出来ます。ブリンガーの投獄場所はその場所・状況如何に関わらず脱獄は不可能です。監督は上記のことと、まだステラバトルの告知はされていないことをペアに伝えましょう。
▼第二章「牢獄に断頭台の刃は響く」
【描写】
シャーッ…………ダンッ…………
何度目かの音。断頭台の刃がすべり落ち、罪人の首を断つ音だ。
音を恐れたのか、気がつけばクリスマス・キャロルの響きも、幸せなひとたちの哄笑も聞こえなくなっていた。聖夜までは、まだ幾許の時間が残されているのに。
でも、それでよかったのかもしれない。
きみたちは、ただ来る死を待つだけの存在ではなくなったのだから。
――つい先程、ステラバトルの告知がくだった。
戦いは今日の終わりに行われる。処刑が執行される、ほんの少し前に。
もし、ステラバトルに勝てれば。
もし、「小さな願い」を叶えられるだけの勲章を得られれば。
もし、『断頭台の刃が落ちない』ようにすることが出来るのであれば。
もちろん、理解はしている。
それはただの一時凌ぎで、必死の運命を変えるなど叶わないことを。
だが、それでも――それでも――。

【解説】
 ブリンガーの処刑が執行される日の夜です。他の罪人たちの処刑が始まり、ペアのいるところにまでその音が聞こえてきます。残された時間はあと僅か。そんな時に、各ペアにステラバトルの告知がくだります。もしこのステラバトルに勝利し、『「小さな願い」を叶えるだけの【勲章】(6個)』を得ることが出来れば、小さな奇跡を起こして今夜のブリンガーの処刑を延期させることが出来るでしょう。監督は上記の旨を各ペアに伝えてください。
▼幕間「聖夜断頭台」
【描写】
『最期の瞬間を、見届けさせてほしい』
そんな願いが叶ったのは、きっと聖夜であるからに違いない。
これから処刑される者と、それを見届ける者。
既に幾度かの仕事を終えた断頭台の刃は、刑場に降る綿雪のなかで赤く濡れ光っている。
窮極の状況。本来であれば、これは運命の袋小路だった。
だが、きみたちには違った。
ここにいるのは諦観のためではない。道は既に開けている。
ステラバトルが始まれば、自動的に決闘場へと転送される。
余人には認知できない時間の、一連の戦いこそがきみたちの運命を決める。
ステラバトルが始まるまでの間――処刑が執行されるその一瞬前までに――きみたちはどこでキーワードを唱えるだろう。

【解説】
 ステラバトルに敗北すれば、この階層群(「この世界」でもOK。世界観に合わせて描写を)が消滅してしまうことを監督は示唆してください。また、勝利したとしても、カーテンコールでペアの明日を描けるのは、『【勲章】を6個得ることが出来たペア』だけです。ほとんどのペアにとってこれが最期のシーンとなることも、監督は伝えてください。
▼ステラバトル
 良き戦いを。勝利すれば【死刑執行人】の勲章を獲得できます。また、監督はステラバトルが終了した段階で、【勲章】の授与を行ってください。
▼カーテンコール「メリークリスマス」
【描写】
12月25日の朝、昨日に続き綿雪が降っている。
今日はクリスマス、由来を知らなくたってかまわない。
誰もが祝い、誰もが笑う。そんな喜びにあふれた聖なる日。
だから、皆は口をそろえて言う。
「メリークリスマス! あなたの今日が素敵な日でありますように!」

【解説】
 無事にステラバトルに勝利したなら、戦いの後、各ペアたちによって護られた、クリスマスを迎えた世界でどう過ごすのかをそれぞれのペアに演出してもらいましょう。
 【勲章】の数が6個に達していたペアは、それを消費して「小さな願い」を叶えた結果、処刑が執行される寸前で奇跡が起こり、処刑までの期間が延長されて再び牢獄へと戻されます。
 【勲章】の数が6個に達さなかったペアのブリンガーは既に罪人として処刑されたので、演出はそのシースの俳優が行うことになります(どのような最期だったか等をブリンガーの俳優が演出しても構いません)。

恙無く、聖夜に断頭台の刃は落ちた
断罪は為され、すべて世は事も無し

シナリオは以上となります。監督も俳優もお疲れ様でした。
成長処理を行ってから、感想等を伝え合ってセッションを終了してください。
また、SNS等でシナリオや舞台の感想などをいっていただけると、作者がとても喜びます。

■シナリオノート

 『キャラクターの死』というのは一大イベントです。NPCですと、それは物語の発端であったり、転換点であったり、シナリオにおいて何かしらの大切な意味がある場合が多いように思われます。NPCですらそうなのですから、物語の主役であるPCの場合だとその死はさらに重大性が増すというものです。
 ほとんどのTRPGにおいて、プレイヤーは究極的には『PCの死』を避ける為に行動を行うというのが根本にあります(当然、シナリオに設定された目的――囚われのお姫様を助ける、とか、村を困らせる怪物を倒す、とか――はありますが)。
 このシナリオセッティングは、その内容として『PCの死』に焦点をあてたものです。
 ペアという関係性のなか、必死の運命にあるペアが、打開するための手段を見つける。
 しかし、その手段を実行するためには、ただ戦闘に勝つだけではなく、他を犠牲にする形で勝たなければならない……そのような状況のなか、各ペアはどのような関係性を描くのか。
 そんなことを考えながら、このシナリオセッティングを作りました。

●作成者:トカゲッコー(MYTH & ROID「雪を聴く夜」を聴きながら)
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本作は「どらこにあん」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『銀剣のステラナイツ』の二次創作です。
(C)Fuyu Takizato / Draconian
(C)KADOKAWA

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