本作は、「すがのたすく/F.E.A.R.」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する「モノトーンミュージアムRPG」の、二次創作作品です。
(C)Tasuku Sugano/FarEast AmusementResearch Co.,Ltd.「モノトーンミュージアムRPG」
目次
■演目データ
傾向:【職工の国】【協力型】【シティ】
プレイヤー:3~4人
演者レベル:3~4
プレイ時間:5~8時間(オフライン及びボイスセッションの場合)
必須:ルールブック『モノトーンミュージアムRPG改訂版』(以下、『MMM』)
サプリメント『カッサンドラの書架』(以下、『書架』)
■本演目について
この演目は、職工の国とからくり、からくりを廻る人々に焦点を当てた物語だ。世界観内で既に設定の存在する規模の大きな国を舞台とする演目(シティアドベンチャー)でもある。また、職工・狩人クラスを演じるプレイヤーは『書架』の所持が必須となる。
GMであるあなたは、プレイ前に演目と職工の国、からくり、職工に関する解説に目を通しておくとよいだろう。
■演目背景
“職工の国”の廃品置き場で目覚めた記憶喪失のからくり・PC①は、唯一憶えていた言葉を使命とし、「美しいもの」を探していた。
ある日、PC①は、職工・PC②と出会い、白領山脈の峰に並んだ巨大な歯車へ向かおうとする。
だが、PC①が巨大な歯車へ近づくにつれ、職工の国の人々の意識する時間に奇妙なほつれが生じ始める。
人々の時間が狂う中、紡ぎ手は時間を歪ませた異形を見つけ出し、倒すことで人々の時間は正され、職工の国に穏やかな時を取り戻せるだろう。
●舞台設定:職工の国
左の地は北部、峻厳なる白領山脈の崖に張りつくようにして作られた国こそ職工の国である。
この国は技術力に秀で工業技術を以て左の地に名を知られており、人々は進歩と発展を尊び、自然暮らしも技術に依存し、その多くは職工や職工に関連する仕事を生業とする。
国全体に職人気質の風があり、昔ながらの頑固実直さと、新しい技術を拒まない風通しの良さの二面性を持つ。そのような土地柄だから、紡ぎ手に対する態度も寛容であり、いわれなく迫害を受けることもあまりないだろう。
そんな人々が誇るものは巨大な歯車と蒸気機関である。どちらも生活になくてはならない技術であり、他の様々な次世代技術の礎でもある。
特に白領山脈の峰に沿って並んだ巨大な歯車は、国の何処からでも見上げる事が出来、蒸気機関の吐く煤煙のため上空をスモッグに覆われ常に薄暗い職工の国で暮らす人々にとっては休みなく回る巨大な歯車は太陽のような象徴である。
●物語の詳しい流れ(クリックで開きます)
職工の国――白領山脈の崖に張りつくようにして作られたこの国には、山脈の峰に沿って巨大な歯車が取り付けられている。歯車は、職工の国の技術進歩と発展を象徴する存在である。
歯車の永続する回転は、機械動力として利用され、山を上下するロープウェーを動かし、また回転をアイデアに蒸気機関とそれを利用した鉄道技術を生んだ。また、その運動エネルギーは電力に、さらには電話等の次世代技術を生む素地にもなっている。
そんな職工の国において内外問わず最も知られる技術は、からくりである。国の主要輸出品であるからくりの製造技術は規格化の進む分野だが、一子相伝の業や再現不可能とされるからくりが見つかるなど、謎多き分野でもある。
薄暗い廃品置き場で目覚めたからくり(PC①)は、そんな謎多きからくりのひとつだ。ある言葉だけを除いた一切の記憶が無く、自身の事は何一つとして分からない。
ある言葉――『美しいものは永遠であり、ゆえに美しいものを知る者は幸福である』。
からくりは、「美しいもの」を探さなければならない。
なぜ見つけるのか? 見つければどうなるのか? そもそも「美しいもの」とは何か?
それら疑問符の「答え」こそが、からくりの使命に違いないからだ。
からくりの目覚めた廃品置き場には、ガラクタが大量にある。手始めにからくりは、ガラクタから「美しいもの」を探し始めた。
「美しいもの」を探す日々の中、からくりは廃品置き場でひとりの職工(PC②)と出会った。職工と交流する中で、からくりは巨大な歯車の存在を知る。
歯ぐるま。それは部品がピッタリと填まるようにからくりの魂に響いた。からくりの探す「美しいもの」とは、歯ぐるまを指すのではないか。
そうして、からくりが暗がりから出る時がきた。
遠く山の峰を見上げると、空覆うスモッグの先の遙かなる白領山脈の峰に、目指すべき歯ぐるまがある。
からくりが歯ぐるまに近づくにつれて、周囲に異常な現象が表れるようになった。
それは人々の物理時間と意識時間の剥離であり、一秒が二秒、二秒が四秒、四秒が八秒へと、時間秩序が壊れてゆく。
時計が精確な時を刻んでも、それを認識する人の意識が歪めば、いずれ時間は進む事を止めるだろう。
その先に待つものは、歯ぐるまの回らない永遠に静止する世界である。
『美しいものは永遠であり、ゆえに美しいものを知る者は幸福である』
それはからくりを動かす唯一の記憶であり、そして、からくりの魂に刻まれた歪んだ御標であった。
異形災害が進むにつれ、からくりは思い出す。からくりは、かつて伽藍アリスに魅入られたからくり技師によって造られた。
アリスはそのからくりを気に入り、戯れに自身の狂気を魂として吹き込んだ。
『美しいものは永遠であり、ゆえに美しいものを知る者は幸福である』
それは、歪んだ御標を核とした、時限爆弾。起動条件は【永遠を希求する事】。
一度目は、目覚めたそのとき。二度目は、職工が「歯ぐるま」を告げたとき。
そのときが来る度、からくりは時を進める。
時は進み、繰り返される歪んだ御標は、世界に歪みを振り撒いてゆく。人々の時間の糸はほつれ、やがて時間秩序は崩壊するだろう。
これを阻止するたったひとつの術は、歪んだ御標の発生源たるからくりを破壊する事。
歯ぐるまは、その回転を徐々に緩慢にしている。
選択肢はひとつ、決断の時が迫る。
窮極の状況の中、神より下されし御標を携えた語り手“ミセス・ハート”が、紡ぎ手たちの前に現れる。
彼女は、紡ぎ手たちにもうひとつの選択肢を言祝いだ。
『正しい心のからくりは、歪んだ歯ぐるまを打ち壊し、すべて世は事もなし――めでたしめでたし』
“ミセス・ハート” は言う。
からくりの心を新たな奇魂石へと複製する事で伽藍アリスの「歪んだ御標」のみを排除できる、と。
しかしそれは、歪んでいるとはいえ、からくりが製造者から与えられた使命を永遠に放棄する事を意味する。
選択肢はふたつにひとつ――そして、紡ぎ手たちは決断する。
世界に顕れた歪んだ御標は、伽藍アリスの狂気を顕在させ、“伽藍アリスの影”を形造った。紡ぎ手たちが“伽藍アリスの影”を倒す事で、その核たる歪んだ御標は排除され、職工の国の時間秩序は回復する。
戦いの後、紡ぎ手たちのその後を描き、演目は終了となる。
■ハンドアウト
各PCには以下の設定がつく。セッション開始時にプレイヤーとよく相談すること。
PC①:「美しいもの」を探す機械人形 (種族:からくり必須)
PC②:新進気鋭の時計技師
PC③:正しい時間を繕う裁縫師
PC④:狂気を穿つ狩人
【PC①用ハンドアウト】
パートナー:「美しいもの」 感情:執着
クイックスタート:歯車仕掛けの従者 クラス:からくり
君は記憶喪失のからくりだ。君の目覚めた場所は職工の国の薄暗い路地裏だった。辺りには既に役目を終えたガラクタが山と積まれている。そう、そこは廃品置き場だ。いつ、どこで、だれが君を造ったのか――その使命すらも今は何もわからない。君の持つ唯一の記憶は『美しいものは永遠であり、ゆえに美しいものを知る者は幸福である』という言葉。「美しいもの」。君はそれを探してガラクタの山へと向かった。
【PC②用ハンドアウト】
パートナー:巨大な歯車 感情:憧れ
クイックスタート:『書架』記載クラス クラス:職工
君は職工の国の時計技師だ。君は保守的な時計技術に新風を起こそうと日夜模索している。そうして創意を得ようと訪れた廃品置き場で君は記憶喪失のからくり・PC①と出会った。そのからくりは「美しいもの」を探していた。「美しいもの」。君には心当たりがあった。遠く白領山脈の峰に並んだ巨大な歯車。神秘で高度の美しい技術。そのからくりは、巨大な歯車のもとへ行くという。君はそのからくりに興味を持ち、同行する事にした。
【PC③用ハンドアウト】
パートナー:アブラアン・ブレゲ 感情:感服
クイックスタート:針の魔女 クラス:裁縫師
君は“夜の女王”アリア・B・コロラトゥーラから、ある人物に会うよう連絡を受けて職工の国へ訪れていた。その人物とは、国随一の時計技師“神の腕”アブラアン・ブレゲである。ブレゲは君に“時間秩序の歪み”について話す。ブレゲによると、現在、職工の国で人々の意識時間に奇妙な“ほつれ”が発生しているという。このまま時間が狂えばやがて現実は崩壊する、とブレゲは言った。恐ろしい事が起きようとしている。君は正しい理を繕わなければならない。
【PC④用ハンドアウト】
パートナー:伽藍アリス 感情:(任意)
クイックスタート:『書架』記載クラス クラス:狩人
それは狂った少女のみる夢。或いはアリスという伽藍。君の目的は、それを終わらせる事。伽藍アリスを追う君の眸は、彼女を発端とする多くの悲劇を映してきた。彼女にとって世界とは自分のみる夢でしかなく、めちゃくちゃに壊して構わないものなのだという。わからせなければならない。彼女の都合の良い虚構を否定し、「甘くて幸せな夢」など何処にも無いという事を。
ある残酷劇の終幕に君は伽藍アリスと対峙した。そこで彼女の言った時計と歯ぐるまに関する狂言は、君につぎの行き先を決めさせた。
■今回予告
うるわしき黄金の昼下がり、ある“美しいもの”との出会い――
永遠に回りつづける歯ぐるまの国の狂った永遠を夢みる“だれか”は願うのです
時間よとまれ、君は美しい。美しいままに滅んでくれるなと
やがて“あなた”は目を覚ます。時計の針は動きだす
動きだした時計の針は時間秩序の輪環に暗影を落とす
「つづきはこんど――いまがこんど!」と、進む針に止まる針
永遠の美を求め、進展と停滞は秤にかけられる
――――さあ、まこと美しいものを決める時がきた
モノトーンミュージアムRPG『アリスと歯ぐるま RE』
――――かくして、物語は紡がれる
■キャラクター作成
今回予告を読み上げたのち、ハンドアウトを各プレイヤーに配布せよ。
どのプレイヤーにハンドアウトを渡すかはGMの任意にしてもよいし、プレイヤー間で選択させてもよい。プレイヤーの人数が少ないときはPC番号の若い順に優先すること
●クイックスタート
以下の5つのサンプルキャラクターをクイックスタートで使用することを推奨する
PC①:歯車仕掛けの従者(『MMM』P132)
PC②:なし(『書架』記載クラス)
PC③:針の魔女(『MMM』P112)
PC④:なし(『書架』記載クラス)
●コンストラクション
PC①:からくり ※種族が「からくり」でなければならない
PC②:職工
PC③:裁縫師
PC④:狩人
●PCの設定
以下は、演目に影響を及ぼす可能性の高いPCの設定となる。GMはこれらの内容をプレイヤーへ伝え、相談しながら設定を詰めていこう。
▼PC①
・PC①は演目開始時点から記憶がなく、過去を持たない。
・PC作成の特殊処理:【配役:出自表(『MMM』P147)】は、「詳細不明」となる。
・PC①の記憶喪失の範囲はエピソード記憶(個人的な経験に結びついた記憶)に限定する。これは、一般的な知識すら一切ない状態というのはRPが困難であり、またその遊び方はこの演目の本旨ではないからだ。
・設定の都合、PC①に交友関係が存在しないため、パーソナルパートナーの決定に困る場合は「PC①の製作者」とするとよいだろう(顔も知らない自身の作者を妄想しよう)。
●PC間パートナー
キャラクター作成後、PCの自己紹介を行う。その後にPC間パートナーを結ぶこと
また、パートナーを結んでいるPC同士は面識があり、(記憶がないPC①を除いて)互いを紡ぎ手であると知っているものとする。
結び方は以下のとおりにするか、PL同士が相談して決めてもよい。進行に都合のよいようにすること
PC①→PC②→PC③→PC④→PC①
※なお、PC①は導入時、PC②の導入で出会う事を除いて、他のどのPCとも初対面である。このことは、キャラクター作成時にプレイヤーに説明すること
以上の事情から、PC④がPC①とPC間パートナーを結ぶのは合流時でも構わない。
●NPC
ここに記述するNPCの内容は、GMが描写やRPの参考にするためのものである。プレイヤーに提示する場合は事前に内容を確認して取り捨て選択しよう。
伽藍アリス
(出典:『改訂版』P93)
“黄昏の使徒”に属する伽藍。11歳。女性。
「この世は自分の見る夢」という妄執に憑りつかれた少女。
性格は子どもそのもので、自分を夢から目覚めさせてくれる存在を求めては各地で殺戮を繰り返している破滅主義者。本演目における黒幕。
アブラアン・ブレゲ
(出典:旧版サプリ『インカルツァンド』パーソナリティーズ)
職工の国の13人の大頭のひとり。74歳。男性。
失われた時計技術を復刻した“神の腕”と評される超一流の老時計技師。
本人は敬虔な聖教徒であり保守派に属するが、紡ぎ手の存在には寛容な立場をとる。
“ミセス・ハート”
(出典:旧版サプリ『インカルツァンド』パーソナリティーズ)
世にも珍しい奇魂石の行商人。年齢不明。女性。
からくりの記憶を売買したりメンテナンスする専門家。
彼女の正体はからくりで、とある目的のためにからくりの心を蒐集、売買しながら左の地を廻っている。本演目では「語り手」の役割を与えられている。
○オープニングフェイズ
それぞれのPCが事件に関わっていくまでの『導入』を描くフェイズ
●シーン1:からくりの目覚め
シーンプレイヤー:PC①
◆解説
描写1は、薄暗い路地裏で目覚めたPC①が、表通りの雑踏から聞こえてくる話し声を聞き自身の置かれている状況を整理する過程を描写するシーン。描写1後、描写2に移り、PC①は唯一記憶する言葉を、自分の使命として認識する。
※描写2でPC①が『美しいものは永遠であり、ゆえに美しいものを知る者は幸福である』という魂から響く声を聞いた瞬間が、PC①の魂である歪んだ御標の紡ぐ“時間秩序の歪み”が発生する瞬間である。この時点でPC①はそれが歪んだ御標の声だと気づくことは出来ず、他に紡ぎ手もいないため歪みを引き受けることはできない。以降、PC①は知らず知らずのうちに『永遠を希求』し、何度も歪んだ御標を繰り返すことになる。
▼描写1
目覚めたらどこか薄暗い場所にいた。辺りにはガラクタが山と積まれている。遠くからは雑踏の音と、たくさんの話し声が聞こえてくる。どうやら、ここは表通りから逸れた路地の先の薄暗い広場で、それが廃品置き場と化した場所らしい。君はこれまでの事を思い出そうとして気づいた。――目覚める以前の事が、何も思い出せない。
▼セリフ:表通りの雑踏から聞こえてきた会話
「――鉄道中央駅はどっちに行けばいいかな? せっかく職工の国へ来たのだし乗ってみたいんだ」
「――それならこの表通りにあるデカい建物がそれさ。ただ、鉄道は利用客が多い。乗るなら少し待たなきゃならないよ」
「――この辺りも開発が進んできたわね。来るたびに新しい建物が立つのですもの」
「――けれど、問題もありますよ。急な開発の弊害でよくない人の溜り場になったり、不法投棄が増えたり。ほら、あの路地の先の広場、建物に囲まれて暗いから人も近寄らなくて、ゴミ捨て場になってしまいました」
▼描写2
君はからくりである。ならばいつか、どこかで、だれかが、何らかの使命を与えるために君を造ったのだ。だというのに、その記憶がまったく無いというのは不思議だ。君はさらに記憶を探る。すると、思い出せる言葉がひとつだけあった。それは、まるで魂から響く声のように、君の脳裏に木霊した。
▼セリフ:魂から響く声
『美しいものは永遠であり、ゆえに美しいものを知る者は幸福である』
◆結末
『美しいものは永遠であり、ゆえに美しいものを知る者は幸福である』という言葉は、PC①の唯一の記憶だった。「美しいもの」とは何か。それはわからない。わからないから、探すしかない。もとより、それ以外何もないのだから。それに、覚えているということは、それは大切なものであるに違いない。幸いにもPC①のいる場所は廃品置き場。辺りにはものが山と積まれている。
PC①は廃品置き場で「美しいもの」を探し始めた。シーン終了。
●シーン2:兎狩り
シーンプレイヤー:PC④
◆解説
PC④が職工の国を訪れる前、伽藍アリスを追う中で彼女と対峙した時の回想。伽藍アリスの手によって町の家々は焼け落ち、逃げ惑う人々も既に息絶えた悲劇の幕引きに、PC④が駆けつけるシーン。すべてが終わった時、アリスと対峙するPC④は、つぎの舞台について伝えられる。
▼描写
それは、君が職工の国に訪れるきっかけとなった異形災害。君は伽藍アリスを追い北部を旅するなかで彼女の行方を掴み、ある町へと駆けつけた。しかしそのとき事態は既に手遅れとなっており、伽藍アリスによって町は焼かれて人々は死に絶えていた。
無人の町には愉しげな少女の哄笑が響く。それはこの場所で殺戮を行ったアリスのものであり、彼女は血に塗れたまま、まるでカーテンコールに出る主役のようにひとり広場で踊っている。
君の姿に気づいたアリスは動きを止め、人懐こい笑みを君へと向けて声をかけてくる。そこには周囲の惨憺たる有様を気にする様子は微塵もない。幕引きに、この悲劇の主役である少女は君と対峙し、つぎの舞台について話した。まるでつぎは間に合うかと挑発するように。
▼セリフ:伽藍アリス
「ごきげんよう、PC④さま! 本日は、オヒガラもよく」
「舞台に上がるにはちょっと遅いんじゃなくって? ほら、もうゼンブ終わってしまったのよ。拍手も鳴り止んで、もう皆静かになっちゃった」
「PC④さまには、つぎの舞台を教えてあげる。『――夢の中では、だれもかれも時計を気にしているの』。それってツマラナイわよね? あたし知っているわ。時計ってとっても繊細で、歯ぐるまひとつ失えば、針が動くことはないのよ」
◆結末
PC④は、こんどこそアリスによる悲劇を阻止すべく、つぎの舞台である時計と歯ぐるまの舞台――職工の国へ向かった。シーン終了。
●シーン3:時を縫う
シーンプレイヤー:PC③
◆解説
PC③は“夜の女王”アリア・B・コロラトゥーラの要請に応じ、アブラアン・ブレゲより現在起きている異形災害について聞くため、職工の国のブレゲの工房へ訪れるシーン。ブレゲはPC③に職工の国の“時間秩序の歪み”について話し、その解決をPC③に依頼する。
▼描写
“チクタク、チクタク”――そこには時を刻む音が充満している。君は“夜の女王”の連絡を受け、職工の国のブレゲの工房へと訪れていた。国随一の時計技師アブラアン・ブレゲ。“神の腕”とも称される職工は、時間に奇妙なほつれを見つけたという。
ブレゲは君に“時間秩序の歪み”について話す。それは人々の意識の中に生まれたほつれで、人々の時間感覚を狂わせ、現実を崩壊させるものである。
時計は正しい時を測る機械であり、その物理時間の歪みは時計技師の手業で正せる。だが、意識時間の歪みは正せない。それは、裁縫師の手業だ。
ブレゲによると、人々の時間の歪みが表面化するとすれば、白領山脈に回る巨大な歯車からだという。
▼セリフ:アブラアン・ブレゲ
「アブラアン・ブレゲだ、PC③。あんたの事はアリアから優秀だと聞いた。よく来てくれたな」
「時間がない。いま職工の国で起きている異形災害について話そう」
「まず、時間には二つの見方がある。一つは、運動の間隔。これは時計で測れる物理時間だ。もう一つは、運動の感じ方。これは時計では測れない、謂わば意識時間だ」
「ほつれが顕れているのは、後者の意識時間。数日前、おれは自分の造った時計の針の運行に微かな違和感を持ったことで、この時間の歪みに気づいた。意識時間が、物理時間から剥離する。それが“時間秩序の歪み”だ」
「時間の剥離は未だ表面化しないで済んでいるが、時間を経つ毎にほんの僅かに増しつつある。誤差が積れば、いつかおれたちの一秒は永遠となり、現実が崩壊する」
「恐ろしい事が起きようとしている。おれは時計を造り、それを知った。正しい時間を繕わなければならないが、おれにはできない。できるのはPC③、あんただ」
「まずは歯ぐるまを目指せ。この国の人々の意識の中にある、最も正しく運動する機械とは、偉大な歯ぐるまに他ならない」
◆結末
PC③は、職工の国で起きている異形災害を知った。ブレゲはその解決をPC③に依頼した。解決を急がなければならない。
この異形災害において時間は進むほどに意味を成さなくなるのだから。PC③は事件の解決に乗り出した。シーン終了。
●シーン4:語る職工と夢みるからくり
シーンプレイヤー:PC②
◆解説
PC②が路地裏の廃品置き場を訪れ、PC①と出会うシーン。PC②から巨大な歯車を知ったPC①は、再び魂から響く声を聞き、巨大な歯車のもとへ向かう。PC②はPC①に同行することを決める。
※このとき、伽藍アリスの歪んだ御標〈歪んだ歯ぐるま〉の起動条件【永遠を希求する事】が満たされ、PC①に二度目の『美しいものは永遠であり、ゆえに美しいものを知る者は幸福である』という歪んだ御標が下される。PC①は、この言葉を御標であるとは認識できない。混乱を避けるため、歪み表の処理は同日同刻の出来事であるミドルフェイズのシーン5で行なうこと。
▼描写
ある時、古い時計技師が言った――“時計技術に革新はいらない”と。対して、若い時計技師は嘆いた――“枯れた技術などつまらない”と。職工の国に保守派と革新派があるように、どこにも対立がある。
今、君は鉄道中央駅前の表通りから少し逸れた路地裏の廃品置き場にいる。ここには新しい時計の創意を得ようと訪れていた。君はそこで、憑かれたようにガラクタを漁るからくりと出会った。そのからくりには記憶が無く、何かもわからない「美しいもの」を探しているという。新しいものを探す君と「美しいもの」を探すからくり。その奇妙な邂逅は君の興味を惹いた。
「美しいもの」。君にはひとつ、心当たりがある。君から巨大な歯車について聞いたからくりはそれを目指すという。君はからくりに同行することを決め、かくして物語の歯ぐるまは静かに回りだした。
◆結末
PC②の言葉は、からくりを遠く白領山脈の峰に並ぶ巨大な歯車へ目指させた。からくりの探す「美しいもの」に興味を惹かれたPC②は、からくりに同行する。シーン終了。
○ミドルフェイズ
PCの『合流(協力)』と事件の『調査』、『真相の究明』を描くフェイズ
※シーン5以降、PC①が永遠を希求する毎に、その魂に秘められた歪んだ御標が繰り返される。
永遠への想いは歪んだ御標を紡ぐ動力となり、『美しいものは永遠であり、ゆえに美しいものを知る者は幸福である』という欲望を叶えようとするだろう。
従って、GMは、シーン5以降、PC①が【永遠を希求する事】と思える言動をするたび、GMの裁定で正体不明の歪んだ御標を下らせ、歪み表を振って構わない(ここで発生した歪みはPCが引き受けられる)。
また、魂の声としてではあるが、御標の内容を把握できるのはPC①だけであり、他の者には「なんらかの御標が下されたことにより歪みが発生した」としか分からない。
なお、本演目でシーンにより強制的に下される歪んだ御標の回数は3回である。GMはこの3回を含め、合計5~6回程度の歪んだ御標を下らせるようにするとよいだろう。
GMは[歪んだ御標の下った回数]を必ず記録しておくこと。
●シーン5:時間は進む
シーンプレイヤー:PC④(いない場合はPC③)
◆解説
伽藍アリスを追って職工の国を訪れたPC④は、人々のふるまいから日常の裏で異形災害が静かに進行していると気づく。シーン4でPC①から発せられた歪んだ御標の影響により、無辜の人々の日常に一筋の暗影が落ちる様を描くシーン。
※このときの歪み表(『MMM』P306)は、「平穏無事」を選択して発生させること。
▼描写
君は伽藍アリスの狂言を追い職工の国を訪れていた。
空はスモッグで覆われて常どんよりとしたところだが、この国に暮らす人々の態度は明るく、君のような余所者にも寛容である。
伽藍アリスがつぎの標的にこの国を選んだのであれば、国のどこかしらで何らかのほつれが表れているはずだ。
君は人々から話を聞くも、だれからも異形災害の兆候が表れたという話は聞けなかった。だが、聞き込みを続けるうちに、君は人々のなかの、ある違和感に気づいた。
――近ごろは、やけに時計の針が進むのを遅く感じる。
それはここ数日の間、人々が感じていた小さな違和感だった。
ある日常の一幕に、町角の詩人は時間を忘れて日課の詩を吟じた。ある職工は仕事の合間に少しばかりの休憩を取った。ある童子は首を長くして親の迎えを待っていた。そして、そんな日常に少しばかりの違和感を感じた人々が、ふとつぶやいた。
――そういえば、今日の歯ぐるまは、なんだかおかしい気がする。
数々の小さな違和感にだれしも首を傾げるが、それはまだ、気のせいに違いない。
▼セリフ:違和感を抱く人々
「まだこんな時間だ。いつもなら、もうそろそろ日が落ちる頃なのに」
「あれ、ヘンだな。この時計、時間がまったく進んでいないじゃないか」
「ねえ、おかあさんはいつになったら来るんだろう?」
◆結末
歪み:平穏無事発生。
※この歪みは、PC④が引き受ける事ができる。引き受けた場合、GMは「PC④の目の前にいる人の“意識時間の歪み”が緩和された」と描写すること(親を待つ童子に迎えが来た等)。
人々の頭の中にどこからか不思議な音が聞こえてくる。
“カチカチ、チクタク、カチカチ、チクタク”――それは歯ぐるまの回る音。それは歪な時計の針の音。耳をふさいでも聞こえる音は人々の正気をすり減らしていく。
異形災害は確かに起きている。それも、人々の意識のなかに。違和感の正体に近づくため、PC④は巨大な歯車を目指した。シーン終了。
※ここで発動する歪み表は、シーン4でPC①から下された二度目の歪んだ御標によるものである。つまり、シーン4とシーン5は同日同刻の出来事となる。
また、一度目の歪んだ御標が下されたのは、シーン1のPC①の目覚めの時となる。
●シーン6:一刻を争う
シーンプレイヤー:PC③
◆解説1
PC全員登場。描写1では、巨大な歯車を目指していたPCたちが、歯ぐるまへ通じるロープウェー乗り場にて一堂に会する合流シーン。描写1後、描写2では、ロープウェー乗り場で暴動が発生する。ロープウェー乗り場は混乱に包まれ、PCたちも巻き込まれる。異形災害の歪みの顕在化によるミドルフェイズの戦闘を描くシーン。
▼描写1
君たちは各々の目的のため巨大な歯車を目指す。職工の国で巨大な歯車へ向かうにはロープウェーを利用するのが一般的な方法だ。移動に使われるロープウェー乗り場は、ロープウェーを待つ人々で賑わっている。そのなかでも“時間秩序の歪み”の影響を受けない君たちは、互いの存在を認識するだろう。
君は合流を終えてから気づいた。その賑わいは不穏をも孕んでいる。
▼セリフ:ロープウェー乗り場の人々
「なあ、次のロープウェーはいつ来るんだ? 随分遅くないか?」
「そこまで言うほどかね。確かに、少々遅れてる気はするが……」
「今日のロープウェーはどうなっている。いつもはこんなに待たないのに」
「クソ、時計が壊れてやがる。だれか時計は持ってないか?」
「おい、おまえ! 割り込むなよ! こっちはずっとずっと待ってんだぞ」
「うるせえ! なんでロープウェーは来ねえんだよ! おれは急いでるんだ!」
「あなた、乱暴はやめなさいよ、きゃあっ」
「おいアンタ何やってんだ! うわっ、そんなものを振り回すな!」
「おかあさんっ……ああっ、血が……だれかたすけてっ!」
◆描写2
歯車の動力により動くロープウェーの発着の間隔に大きな遅延は見られない。この騒ぎの原因は“時間秩序の歪み”にある。
混乱し暴徒と化した人々を止めなければ危険な状況だ。暴徒化した人々を鎮めようにも、もはやだれも声は届かない。
それどころか、暴徒は武器を手に君たちを取り囲んで襲いかかってくる。どうやら、手荒な方法を使ってでも早急に騒ぎを収める必要がある。
※暴徒との戦闘。
怒れる群衆(モブ、1体。『MMM』P279)と戦って勝利すれば場の混乱を収められる。PCたちと暴徒はエンゲージした状態から戦闘を開始する。
==========
▽敵データ
名称:怒れる群衆
種別:人間(モブ)/レベル:5/サイズ:1
肉:9/+3 知:9/+3 感:9/+3 意:18/+6 社:6/+2 縫:6/+2
命:12 回:4(11) 術:2 抵:2(9) 行:8 戦移:13m 全移:26m
HP:50 MP:12
攻:<殴>+22/【命中値】/対決/単体/至近/物理攻撃/CT12
防:斬2/刺0/殴1
特技:《範囲攻撃》自身/シーン2回/攻撃の対象を範囲(選択)に変更
『怒り狂った暴徒の群れ。――狂気のなかには、伝染病のようにはびこるものもある。』
==========
◆解説2
戦闘に勝利すれば、PCたちは怪我人は出たものの大きな犠牲もなく速やかに混乱を収める。敗北した場合、「人々に犠牲者が出たが、辛うじて混乱は収まった」とする。
◆結末
騒ぎを収めたPCたちは、この異形災害の解決に協力し合うことを改めて確認した。だが、今のPCたちの知る情報だけでは事態の全容を掴むには至らない。
さらなる情報収集のためにPCのたちは再び行動を開始する。シーン終了。
●シーン7:情報収集
シーンプレイヤー:PC②
◆解説
このシーンは情報収集シーンとして扱われる。PCは全員登場となる。PCひとりにつき、1回ずつ情報収集判定を行える。
もし全員の判定が終了しても、調べきれていない情報項目があった場合は、シーンを改めて再度判定を行う。再度判定を行う際は、迫るタイムリミットを表現するため、PC①から歪んだ御標をひとつ下すこと。
情報項目は、特にこだわりがなければ上から順に処理していくとよいだろう。なお、情報収集判定にファンブルした場合、該当PCの剥離値をプラス1する。
▼描写
君たちは、職工の国で現在起きている異形災害の解決に向けて協力し合うこととなった。
人々の意識に表れている時間感覚の異常が、“時間秩序の歪み”によるものだとすれば、その歪みを生み出している異形が職工の国のどこかにいるはずだ。
事態解決のためには、歪んだ御標の発生源たる異形を探し出さなければならない。
〇情報項目
▼御標を紡いだのはだれか(【縫製】、難易度9)
※PC3のみ判定可能
世界の理、時間秩序――それは「始まり」と「終わり」の関係を意味する。
このまま“時間秩序の歪み”が進めば、終わりがどうなるかは明白である。だとすれば、探すべきはもう一方の始まりである。
出来事には始まりが存在する。発端は何だったのか?
それは目立つものではないはずだ。
だれも見つけられない、薄暗がりの中で何かが起きたのだ。
暗闇から這いだしたもの。最初に現れたものこそが、歪んだ御標を紡いだ異形である。
▼伽藍アリスはどこにいる(【知覚】、難易度9)
※PC4のみ判定可能
ここに伽藍アリスはいない。
伽藍アリスという存在は、事態の進行を暗影に潜んで眺めるいい子ちゃんではない。
あの狂った少女ならば、今頃、手ずから混乱する人々を愉しげに殺し回っているはずだ。
しかし、そうなると奇妙なこともある。
時間が進むと止まる時間、正気を狂気へと誘う仕掛け、きっかけの事件――この現実を嘲笑うような手口は、アリスのものなのだが。
伽藍アリス。歯車。時計。既に手遅れ。時計仕掛け。
アリスは過去にいて、現在にはいない。
では、現在になって動きだしたものは、いったいどこにいる。
▼時計仕掛けなのはあなた(【感応】、難易度12-[歪んだ御標の下った回数])
※PC1のみ判定可能
からくりは白昼夢を見る。
“だれか”の夢だった。それは、こんな夢だった。
うるわしき黄金の昼下がり、私は「美しいもの」と出会った。銀の風のようなその少女アリスはいう――“あたしを造ってくださいな。それはきっと、永遠に美しいものよ”。
金色の髪、蒼い眸、白い肌――可憐な少女の小さな唇から紡がれる言葉は、私に一体のからくりを造らせた。ただの模倣ではない、私の内の「美しいもの」を原型とする器。
彼女はそれを見てにっこりと笑い、その器に言葉を吹き込んだ。
『美しいものは永遠であり、ゆえに美しいものを知る者は幸福である』
少女の言葉は器に満ちて魂となり、こうして世に永遠をもたらす使命を持つ永久機関は生まれた。
ふさわしい時が来れば、からくりは目覚める。その時まで私の命は持たないが、それは大事ではない。
私と少女の生んだからくりは、永遠の幸福を未来にもたらすのだから――“めでたしめでたし”。
▼いま為すべき事はなにか(【社会】、難易度8)
※PC2のみ判定可能
壊れた時計を直すとき、時計技師はまず蓋を開き隠された内部機構を俯瞰し故障箇所を探す。秩序の中の歪みは、全体を観察すればおのずとわかるものだ。
だから、それは、はじめから奇妙だった。
ガラクタの中のからくり。秩序の中の混沌であるそれに興味を惹かれたはずなのに、気づけばより大きな混沌によって秘されていた。
“歯車がひとつでも狂えば時計は動かない。秩序も同じだ”
あの“神の腕”の言葉を引くまでもなく、職工ならば知っている、だれもが知っている。
壊れた機械は直さなければならない。それは紡ぎ手も同じだ。
故障箇所は見つかった。あとは、歪んだ歯ぐるまを取り除くだけである。
◆結末
すべての情報を調べたら、シーンを終了する。
●シーン8:時計仕掛けの歯車
シーンプレイヤー:PC①
◆解説
全員登場。三度目かの歪んだ御標が、今度はPC全員の知る形でPC①から下される。異形災害解決のため、PCたちに「PC①の破壊」という解決策が提示されるシーン。
※解説や描写で歪んだ御標の下った回数を「三度目」と記載しているが、これはミドルフェイズおよび情報収集シーンにおいて、歪んだ御標がひとつも下されなかった場合である。
GMは、[歪んだ御標の下った回数]を描写等に反映すること。
▼描写
ふたたび、歪んだ御標が下った。三度目の声は、君の魂から響くだけでなく、君の口を通じて外へと溢れだした。
(任意の歪み表をROCする)
これで三度目だ。この歪んだ御標は、歯ぐるまの回転のように、時間が意味を失うその時まで延々と繰り返される。
歪んだ御標は示す。
君とは、歪んだ永遠へと至るための時計仕掛けの歯車であった。それと同時に、この異形災害を終わらせる方法でもある。
そう、あとは歪んだ歯ぐるまを取り除くだけ――時間は、もうあまりない。
▼セリフ:PC①
『美しいものは永遠であり、ゆえに美しいものを知る者は幸福である』
◆結末
繰り返される歪んだ御標。行き着く先は永遠に静止する世界。この異形災害を終わらせる方法として、「PC①の破壊」が、PCたちの前に示された。
だが、ほんとうにそれは正しい選択なのか、今一度よく話し合うべきだ。シーン終了。
※当シーン以降、参加者全員の同意があればいつでもPC①との戦闘を行なう選択が可能となる。戦闘を行った場合、その結果に従いエンディングを描写する。
GMは上記の選択について齟齬の無いようにPLへ伝えること。
●シーン9:狂気を穿つ狩人
シーンプレイヤー:PC④
◆解説
PC④が、伽藍アリスによって仕掛けられた此度の演目を俯瞰するシーン。
▼描写
街中が混沌としている。生活の機能は徐々に失われ、住民は皆おかしくなっている。
伽藍アリスにより仕掛けられたこの劇の悪趣味は、その結末への最も容易な至り方が示されている事にある。
歪んだ御標を核とするPC①を破壊すれば、紡ぎ手の決断とPC①という「美しい犠牲」によって、この物語は“めでたしめでたし”と終幕するだろう。
だが、犠牲を伴う選択、もっともらしい大義名分――それは歪んだ御標に服従する事と何の違いがある?
これでは、アリスの操り人形になったようなものだ。狂った筋書きは正さなければならない。もとより、紡ぎ手とはそう在るものだろう。
◆結末
PC④は、異形災害の解決法について自らの態度を示した。シーン終了。
●シーン10:石を売る女
シーンプレイヤー:PC①
◆解説1
全員登場。時間が迫る中、歪んだ御標を打ち壊すための犠牲となる役割を与えられたPC①の前に“ミセス・ハート”が現れる。彼女がPCたちにまことの御標を伝えるシーン。
▼描写1
からくりとは人に奉仕するために造られた存在であり、ゆえに君の犠牲は「美しいもの」となる。犠牲となる事ですべて元通りとなれば、職工の国は再び安寧を得、歯ぐるまはこれからも変わりなく回りつづける。だから、その自己犠牲は「美しいもの」だ。
容易でなくとも、君たちは決断しなければならない。
そうして、刻一刻と選択の時が迫る中、君たちの前に“ミセス・ハート”と名乗る女が現れた。
知る人ぞ知る。彼女は奇魂石 の商人であり、その専門家だという。また、この演目における彼女の役割は「語り手」であるとも。
“ミセス・ハート”は言う――“この来訪はまことの御標に導かれたもの”と。
『正しい心のからくりは、歪んだ歯ぐるまを打ち壊し、すべて世は事もなし』
言祝がれた新たな御標は、奇魂石〈小さな歯ぐるま〉を形造った。
▼セリフ:“ミセス・ハート”
「ここまで来るのに、随分手間をかけましたわ。“転換点”――物語はいつもそうして前進しますもの」
◆解説2
“ミセス・ハート”は、PCたちに新たな選択を提示し、それはPC①の破壊よりも危険であると伝える。
▼描写2
“ミセス・ハート”は君の心を〈小さな歯ぐるま〉に複製し、歪んだ御標の核である〈歪んだ歯ぐるま〉と取り替える事で、〈歪んだ歯ぐるま〉だけを破壊できるという。
だが、それは歪んだ御標とはいえ、君の生まれた理由、使命を永遠に放棄することをも意味する。
さらに、“ミセス・ハート”は、君という器から逸脱した〈歪んだ歯ぐるま〉が、世界に顕在する危険は測り知れないとも言った。
▼セリフ:“ミセス・ハート”
「ただ原物の心を失うだけです。“壊れた部品は取り替える”――機械ってそういうものでしょう」
「もちろん、器から取り出した歪んだ御標はその狂気をより顕します。“タガが外れる”――歪みとはそういうものですわ」
「御標の言祝がれた以上、もとよりわたしには選択権はありません。“わたしは片方に傾いた秤を均衡にしただけ”――そういうものなのです」
◆結末
“ミセス・ハート”がPCたちに新たな選択肢を提示したら、即座にシーン終了。シーン11の描写を行なう。
●シーン11:天の秤
シーンプレイヤー:マスターシーン
◆解説
PLが最後の選択のため、全会一致の決断を行なうシーン。
PC①を破壊すればエンディングとなり、PC①から歪んだ御標を取り外せばクライマックスフェイズへ移行する。
▼描写
PC①を破壊し、時間秩序を取り戻して多くの人々を救うか。
PC①を救うため、多くの人々を危険にさらして顕現する狂気と戦うか。
今、ここに天の秤は均衡を保たれている。
――――さあ、まこと美しいものを決める時がきた。
◆結末
選択は為された。天の秤はある方へと傾き、物語の結末を示す。シーン終了。
PC①の破壊を選択したら、ふさわしい演出を行い、エンディング「美しい犠牲」(シーン18)へと移行する。
PC①を救う選択をしたら、クライマックスフェイズの戦闘へと移行する。
○クライマックスフェイズ
PC達と結末を決定する『黒幕との最後の戦い』を描くフェイズ
●シーン12:ふたつの永遠:アリスと歯ぐるま
シーンプレイヤー:PC①
◆解説1
PC全員登場。場所は「巨大な歯車の下」にすること。PCから取り出された歪んだ御標が“伽藍アリスの影”として世界に顕現するシーン。
▼描写1
巨大な歯車の下、“ミセス・ハート”の秘儀により君の心の複製は為された。
君の内にある〈歪んだ歯ぐるま〉と、〈小さな歯ぐるま〉が取り換えられる。
取りだす心が歪んだ御標であることから“ミセス・ハート”にも成功するかどうかは分からないというが――きっと、今度も君は目覚めるだろう。
やがて“あなた”は目を覚ます。時計の針は動きだす。
動きだした時計の針は時間秩序の輪環に暗影を落とす。
※PC①は、ギミックアイテム:〈小さな歯ぐるま〉を獲得する。
==========
〈小さな歯ぐるま〉
種別:その他(ギミック)
タイミング:オートアクション
購入難易度:-/-
新しいからくりの心。回り続ける小さな歯ぐるま。それはあらゆる技術の性質であり、何者にも止められない前進する意志である。
PC①のみ使用できる。“伽藍アリスの影”を演目中の[歪んだ御標の下った回数]回、【HP】0にした時に使用する。“伽藍アリスの影”を打ち壊し、戦闘に勝利する。
==========
▼セリフ:“ミセス・ハート”
「ふたたび、歯ぐるまは回りはじめました。あとは、幸福に差す“影”を滅すのみです」
「わたしの役目はここまで。それでは紡ぎ手のかたがた、善き結末を」
◆解説2
世界に顕現した伽藍アリスの歪んだ御標“伽藍アリスの影”との戦闘。
猶予はない。この戦いの敗北とは、すなわち世界が歪んだ永遠に到達する事を意味する。
▼描写2
PC①から取りだされた〈歪んだ歯ぐるま〉から、黒い泥のような“虚無”がどろりと溢れだし、ひとつのくすんだ人形を形造った。
それはある少女のカタチ。歪んだ御標を紡いだ伽藍アリスの似姿だ。
“伽藍アリスの影”ともいえるそれは、壊れた機械の様に、ひび割れた言葉を繰り返す。
『美シイモノハ、ハ、永遠、永遠、美シイモノハ、ハ、幸福、幸福、美シイモノハ、ハ、メデタシ、メデタシ……』
“チクタク、カチカチ、チクカチ、タクカチ”――頭上にある巨大な歯車が異質な音を立て不規則な回転を始める。性急に時間秩序は崩れゆく。
世界が狂気に染まろうとする時、物語の最後の戦いが、今始まる。
※逸脱能力《※歪みの侵蝕》(『書架』P165)発動。
戦闘中、ラウンドの終了時ごとにPCは剥離値が+1される。この効果は“伽藍アリスの影”をたおせば解除される。
なお、この逸脱能力に対してPCが《虚構現出》を使用したら“伽藍アリスの影”は《虚構現出》を使用し打ち消す。この《虚構現出》に制限はない。
※“伽藍アリスの影”(ボス。データは下記参照)との戦闘。
==========
▽敵データ
■“伽藍アリスの影”
名称:伽藍アリスの影
種別:異形、からくり/レベル:5/サイズ:1
能力値:肉:15/+5 知:15/+5 感:12/+4 意:12/+4 社:6/+2 縫:9/+3
戦闘値:命:12 回:3(10) 術:6 抵:4(11) 行:9 戦移:12m 全移:24m
HP:40 MP:106
攻:<斬>2D6+12/物理 CT:11
対:単体 射:5m
防:斬0/刺0/殴0
特技:《★歪んだ歯ぐるま》、《※虚ろなる魂》、《無限の魔》、《無慈悲なる一撃》(修正済み)、《武装融合》(適用済み)、《攻撃増幅》3、《鉄の殲滅者》、《歪曲する時》2、《崩壊の一撃》2
<斬>2D6+12/【命中値】/対決/単体/5m/物理攻撃/CT:11
▼逸脱能力
《虚構現出》□□□□ 《※静止する世界》□□
《空間拡大》□□ 《歪んだ幸運》□□
《死神の招き》□□ 《※心砕き》■
《※虚なる願い》■ 《※歪みの侵蝕》■
『美シイモノハ、ハ、永遠、永遠……』『美シイモノハ、ハ、幸福、幸福……』
『美シイモノハ、ハ、メデタシ、メデタシ……』『アリス、アリス、愛シノ娘――コッチヲ、見テ――アリス、アリス、アリス』
◆演目特技
・《★歪んだ歯ぐるま》
タイミング:オートアクション
判定値:自動成功 難易度:なし
対象:自身 射程:なし
効果:この効果は必ず発動する。このエネミーは【HP】が0になっても戦闘不能や死亡にならず、【HP】を最大値まで回復する。ただし、このエネミーは人間にとどめを刺すことができない。
解説:伽藍アリスにより歪んだ御標は紡がれ、紡がれた言葉は〈歪んだ歯ぐるま〉を形造った。
◆攻撃
・『カイロスの鋏』(コンボ:《攻撃増幅》3+《鉄の殲滅者》)
タイミング:マイナーアクション+メジャーアクション
判定値:【命中値】12 難易度:対決
対象:範囲(選択) 射程:5m
攻撃力:<斬>6D6+12 CT:11
解説:自身の黒い泥から形造った巨大な鋏を振るい、周囲の敵を両断する物理攻撃。
・《崩壊の一撃》2
タイミング:ダメージロールの直前
判定値:自動成功 難易度:なし
対象:自身 射程:なし
効果:あなたが行なう攻撃のダメージ属性を<縫>に変更する。シーン2回まで
・《歪曲する時》2
※PCが3人の場合は使用しない
タイミング:イニシアチブ
判定値:自動成功 難易度:なし
対象:自身 射程:なし
効果:このエネミーは即座に未行動となり、【HP】を10点失う。シーン2回まで
◆戦闘初期配置
PC全員をひとつのエンゲージに配置し、そこから10m離れた位置に“伽藍アリスの影”を配置する。
◆戦闘プラン
ラウンドの最初のイニシアチブプロセスに《瞬速行動》を使用し、そのメインプロセスでは移動を行なわず、《空間拡大》を用いて『カイロスの鋏』で攻撃する。《静止する世界》や《歪んだ幸運》は《空間拡大》を用いた『カイロスの鋏』にのみ使用すること。攻撃が命中したら《死神の招き》と《崩壊の一撃》を同時に使用するとよいだろう。
《空間拡大》を使い切った場合は、PCに接近して『カイロスの鋏』で攻撃すること。
《虚構現出》は《空間拡大》にPCが《虚構現出》を使用したときに対して使用するとよいだろう。
【HP】が0になった際は、《★歪んだ歯ぐるま》により【HP】を最大値に戻して復活すること。
●人数が少ない場合
▼PCが3人の場合
“伽藍アリスの影”の【HP】を-10すること。
●[歪んだ御標の下った回数]が多い/少ない場合
▼7回以上の場合
“伽藍アリスの影”の【HP】を-10すること。
▼4回以下の場合
“伽藍アリスの影”の【HP】を+10すること。
※この調整はあくまで一例であり、GMはPCのデータに応じて適宜調整していくとよいだろう。
==========
◆結末
(戦闘終了)戦いの果てに“伽藍アリスの影”は打ち壊され宙に霧散する。巨大な歯車を中心に広がるその衝撃は白領山脈を揺るがした。
舞い上がる砂塵が晴れた時には、巨大な歯車の異質な音は消え、その回転も正常に戻っていた。
シーンは終了となる。エンディングへ。
○エンディング
それぞれのPCが、今回の演目の『結末』を描くフェイズ
以降のエンディングは、シーン18と19を除き、PCが戦闘に勝利し、全員が剥離チェックに成功したことを前提に描写している。
描写はそれまでの展開などによって適宜を変更するとよいだろう。
エンディングの開始前に剥離チェック(P216)の処理を行なうこと。
剥離チェックの際、さらに[歪んだ御標の下った回数]点だけ剥離値を下げること。
●シーン13:黄金の昼下がり
シーンプレイヤー:マスターシーン
◆解説
共通のエンディング。演出を読み上げ、その後の職工の国を描写したら、結末へと移行する。
“伽藍アリスの影”が砕け散った衝撃は、職工の国を覆うスモッグを吹き飛ばした。のぞいた青空と太陽の輝きを浴びて人々は肩を寄せ合い歓喜の声をあげた。人々の感じていた奇妙な違和感も、この「衝撃」のためにどこかへ吹っ飛んでしまう。
▼描写
巨大な歯車から広がったその衝撃は、職工の国の空を覆うスモッグを吹き飛ばし、のぞいた青空から射し込む暖かな昼下がりの陽光が、職工の国にふり注ぐのでした。
▼セリフ:職工の国中の人々
「ああっ、青空を見るなんて一体いつぶりだろう!」
「見て! 陽の光が歯ぐるまに反射してキラキラと……なんて美しい空かしら」
「こりゃあ、しばらくマスクは要らないなあ」
「おかあさん、なにが起きたの?」「とっても素敵な事が起きたのよ。きっと、神様からの贈り物だわ!」
◆結末
めでたしめでたし。シーン終了。
●シーン14:「美しいもの」を探して
シーンプレイヤー:PC①
◆解説
PC①がこれからの事を考えるシーン。
▼描写
初めに目覚めた薄暗い路地裏にて、君はこれからの事を考える。
◆結末
PC①は、薄暗い路地裏から明るい青空の下へ出た。遠くの白峰山脈には今日も歯ぐるまが輝いている。シーン終了。
●シーン15:歯ぐるまは今日も回る
シーンプレイヤー:PC②
◆解説
PC②のもとにひとつの依頼が届く。PC②がその依頼を受けるかどうかを考えるシーン。
▼描写
あの事件から数日後、君のもとにある依頼が届いた。
それは時計技師組合を通し、首長コッペリウス7世より出された依頼だ。
首長は、職工の国にひとときの青空と太陽を届けてくれた神への感謝の証に造られる記念時計の製作を君に頼みたいという。
その推薦と後見人の欄には、アブラアン・ブレゲの署名が記されていた。
“好きにやってみろ”――偉大な先達の声が聞こえた気がした。
さて、この依頼、どうしようか?
◆結末
歯ぐるまは今日も回る。職工の国は日常を繰り返す。だが、変わらない日はひとつとしてない。シーン終了。
●シーン16:すべて世は事も無し
シーンプレイヤー:PC③
◆解説
PC③が此度の事件の報告をアブラアン・ブレゲに行なうシーン。
▼描写
「歪んだ歯ぐるま」の顛末を君はブレゲに報告した。
“時間秩序の歪み”は消え去り、人々の意識時間に表れた“ほつれ”の影響もやがて時間が経てば薄らいでゆく。
▼セリフ:アブラアン・ブレゲ
「PC③、あんたのおかげで国も時間も元通りだ。重ね重ね感謝する」
「“ほつれ”の影響でズレた意識時間も、『時の効用』が何もかも元通りにするだろう」
「礼というわけではないが、もし時計で困った事があればおれのところへ来てくれ」
◆結末
報告を終えたところで、“夜の女王”からつぎの仕事の連絡が入った。君は次の土地へと足を向けた。シーン終了。
●シーン17:少女は愛狂しく微笑んだ
シーンプレイヤー:PC④
◆解説
職工の国から去るPC④が、伽藍アリスと対峙するシーン。
▼描写
事件の後、君はふたたび伽藍アリスを追うために職工の国を出立した。
国を出てしばらくしたころ、峠道をゆく君に、見知った少女の声が呼びかける。
現れたのは金色の髪に蒼い眸をした白い肌の少女――伽藍アリスはその頬をぷくりとふくらませて不満げだ。
そのむくれる姿は、年ごろの少女がわがままを言う様と変わらない。
そして、一通り文句を言ってから、少女は愛狂しく微笑んだ。
▼セリフ:伽藍アリス
「もうっ! せっかくおもしろい舞台を用意したのに。貴方のせいでダイナシよ?」
「結局なんにも元通り。こんなにツマラナイことってないわ! あたしがお客さんなら演者ミナゴロシよ!」
「でも、いいの。PC④さまが、ニセモノに殺されちゃうのはザンネンって思ってたから」
「PC④さま、生きててくれてありがとう! 次に会うときは、ホンモノのあたしが殺してあげる!」
◆結末
PC④との会話が終わると、伽藍アリスは笑顔のまま空間ににじむようにして消え去った。シーン終了。
●シーン18:「美しい犠牲」
シーンプレイヤー:マスターシーン
◆解説
「PC①の破壊」を選んだ場合のエンディング。PC①ごと歪んだ御標は砕け、異形災害は終息する。
時間秩序の歪みは回復し、歪んだ御標を砕いた際の衝撃が職工の国を覆うスモッグを吹き飛ばし、頭上に顕れた青空からは暖かな陽の光が降り注ぐ。
▼描写
PC①の美しい犠牲によって職工の国は救われた。人々はスモッグの払われた青空を見上げ、降り注ぐあたたかな陽の光に歓喜の声をあげた。
歪んだ時間秩序はやがて回復し、何もかもが元通りになるだろう。PC①の美しい犠牲によって。
▼セリフ:歓喜する人々
「ねえ、見て! 青空なんていつぶりかしら? お日さまの光をめいっぱい浴びるのなんてはじめて!」
「なんだか悪い夢をみていた気分だ。あれはなんだったんだろう?」
「なんでもいいよ。結局のところ――“めでたしめでたし”――ってわけさ!」
◆結末
やがて青空はまたスモッグに覆われて、人々の時間に対する違和感もなくなっていく。そしてすべては元通り。「美しいもの」――その犠牲を知るものはなく――すべて世は事もなし。
●シーン19:静止する世界
シーンプレイヤー:マスターシーン
◆解説
クライマックスフェイズの戦闘で全滅した場合のエンディング。バッドエンド。
▼描写
倒れ伏す君たちの意識が、徐々に緩慢になっていく。一瞬は永遠に延び、耳に聞こえてきたのは時計の針が歪な時を刻む音。
“チク…タク……チク………タク…………チク………………タク………………”――やがて、それも聞こえなくなった。意識は虚無に飲み込まれ、動くものはもうない。
◆結末
歪んだ永遠が訪れ、歯ぐるまは止まった。動くものはもうない。演目終了。
■アフタープレイ
物語は終幕となる。
経験点表(P219)の“演目の目的を達成した”項目については、以下のように判断すること。
・“伽藍アリスの影”を倒した:2
・PC①を倒した:2
・PC①を救い、職工の国の時間秩序を取り戻した:3
・PC①を壊し、職工の国の時間秩序を取り戻した:2
・“伽藍アリスの影”を早期に撃破した(目安:3ラウンド以内):2
これでセッションは終了となります。お疲れさまでした。
■「アリスと歯ぐるま」プレイガイダンス
▼「歯ぐるま」って巨大な歯車のどれ?
ぶっちゃけてしまうと、進行に都合の良いものであればどれでも構いません。
テストプレイの際には、『MMM』P69の職工の国MAPを参考に、職工の国に二基ある巨大な歯車へと繋がるロープウェーのうち、西にあるものが民間用だとし、そこから直通する巨大な歯車の片方(MAP左から数えて二つ目)を、演目内で注目する歯ぐるまとしました。
また、上述のようにすることで、PC①が目覚めた鉄道中央駅の路地裏-工房街(職工会議所)-歯ぐるまという直線にPCの視線が通り、美しいです。
▼PC①から下される歪んだ御標は、セッション中にどう表現すればいい?
これはオンラインセッションでのテストプレイ時の作者のやり方ですが、[歪んだ御標の下った回数]を[■■■]とマスクした上で、「条件を満たしたことにより、[■■■]カウントが1増加した」とアナウンスしていました。この場合、ふさわしいタイミング(シーン8開始時など)でマスクを解除すると演出として盛り上がるでしょう。
なお、歪んだ御標を繰り返す条件【永遠を希求する事】については、セッション中開示されなくても問題ありません。プレイヤーは条件について自由に考察しながら遊び、アフタープレイ等で気にする方がいれば教えてあげるとよいでしょう。
▼用語:【物理時間】と【意識時間】と【時間秩序の歪み】
物理時間とは、時計で測れる時間で、運動の間隔のことを表す客観的時間です。
意識時間とは、個人の感じる時間で、運動の感覚のことを表す主観的時間です。
時間秩序の歪みとは、歪みの影響で人々の意識に発生したほつれから流入した虚無により、意識時間から物理時間が異常に剥離する異形災害をいいます。この異形災害の影響下にある人々は正しく時間を認識できず、正常な生活を送るのが困難になるでしょう。
■クレジット
●作成者:トカゲッコー(X:@tokagekko)
本作品はCC-BY-NC-SAライセンスによって許諾されています。ライセンスの内容を知りたい方は(https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/)でご確認ください。
▼参考資料
1)カズオ・イシグロ『クララとお日さま』
解説:AF(人工親友)という人工知能搭載ロボットのクララは、病弱な少女の家庭で暮らすなかで、少女との友情を育み、やがて一家の秘密を知る――。思えば、この演目のHO①をからくりにしたのは本書の結末を読み終え、胸に残った感情を何かにしたいと思ったことが始まりでした。本書は書籍だけでなくオーディブル版もあり、どちらも非常に素晴らしい作品です。実りある読書体験をしたければ、ぜひ。
2)ゲルハルト・ドールンーファン・ロッスム『時間の歴史 : 近代の時間秩序の誕生』
解説:「近代における時間秩序の誕生の歴史」について書かれた本です。時計と時間が人間の歴史と文化において果たした役割を古代から近代にかけて描いており、本演目のコアとなる部分は本書から生まれました。
3)ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』
解説:言わずと知れた児童文学の金字塔です。伽藍アリスは『モノトーンミュージアムRPG』のキャラクターですが、本演目では彼女のキャラクターイメージを本書に仮託しており、特に巻頭詩の影響は大です(私は『鏡の国のアリス』の巻頭詩が好きです)。
4)非可逆リズム『ガラクタノワルツ』
解説:2016年に頒布されたモリモリあつし氏のコンセプトアルバムです。2025年現在はBandcamp等で聴くことができます。人間の少年と人形の少女がゴミ捨て場で出会うお話がイメージされている、本演目にぴったりの音楽です。演目を作るときのBGMは決まってこれでした。
▼あとがき
本演目は、2021年12月28日(4年前!)に公開した旧版の『モノトーンミュージアムRPG』の演目のリメイク作品です。
原案となった演目は、以下のページで公開しています。
(https://tokagekko.com/trpg/alicelook/)
今回のリメイクにあたっては、旧版の演目からシーンを整理・削除し、新たなシーンを追加するとともに、全体の描写や構成を見直しました。加えて、明日発売される公式演目集『赤華は追憶に燃ゆ』にて導入される「ギミックアイテム」という要素に触発され、それを取り入れることで、4年前よりも「自分が作りたかった演目」に近づけたのではないかと感じています。
思い返せば当時はコロナ禍の只中。演目のエンディングに「マスクを外せて喜ぶ人々」の描写を、祈るように入れた記憶があります。それから時間を経、様々な事が前進しましたね。
「前進」という言葉は、リメイクにあたって改めて意識したテーマのひとつです。
「永遠」とは何か。それは持続と静止のどちらで捉えるものか。これは、今の私たちにとっては、もはやそれほど難しい問題ではないのかもしれません。
〇更新履歴
・2025/12/23 公開
・2025/12/24 サムネイル画像を追加
・2025/12/27 誤字・誤植修正。プレイガイダンス、参考資料追記
・2025/12/29 NPC、プレイガイダンス追記
〇サポート
・フルサイズのトレーラーです。画像を保存して卓募集の際にご利用ください。

