〇晴れ。身の回りの心配事の幾つかが杞憂に終わって一安心した。
〇気象庁の発表によれば、南方の海上で3つの台風が発生したという。11月も半ばというのに珍しいことである。五日前にはインドネシアで大きな地震があった。マグニチュード7程のもので、レウォトビという火山が噴火したために起きたらしい。
〇芦辺拓『大鞠家殺人事件』読了。
『明治殺人法廷』とはまた異なるテイストだったが、面白かった。
前半部に渡って活写される戦前既に斜陽にあった大阪船場の人々の暮らしが、後半部の大阪大空襲により一切灰燼と帰す――作中でいうところの数万の人命が国家的殺意のもとに葬られる「殺人事件」。
動機、機会、手段――また犯人も被害者も、何もかも明確であるにもかかわらず、そこでは真実は意味を為さず、ゆえに裁かれる罪もなく、探偵は存在できないその一大事が過ぎ去った時、比べれば些事にも満たない「大鞠家殺人事件」の真実が、探偵によって明らかとなる。
「探偵」の役割とは、非日常を日常に回帰させることである。作中において描かれるそれは、戦争によって失われたものを取り戻そうとする人の営みに他ならない。
私が探偵小説を好ましく思うのは、まさにこの日常への回帰があるからかもしれない。探偵小説を読むことで、現実のなかで崩れそうになる私自身をあるべき姿に戻している……かもしれない。