日記:2024年1月23日

〇晴れ。予報によれば明日は大雪になるらしい。たしかに今日は、降雪を思わせるような寒い日だった。

〇夕、通りかかった地下通路で血痕を見つけた。地下通路は交差点を潜るような形で、階段を下りて入り、50mほど直進した後、また階段を上り出る造りである。その階段の片方に、真赤な血痕が1mほどの範囲で点々と続いていた。はじめは血痕があまりに鮮やかな赤色であったから、血ではなく塗料の類かと思ったのだが、反対側の階段に赤黒く乾いた血痕を見つけ、――ああ、やっぱりあれは血だったか――と一人合点した。
 しかし、そうなると少し不思議な点が出てくるのである。道端に血が落ちているのは、まあいい。鼻血なり、不意の怪我なり、そういうことはあるだろう。だが、たった50mの距離しかない二つの階段に、片や落ちたばかりの赤の鮮やかな血痕が、片や乾いて黒ずんだ血痕が落ちているのはどういうことだろうか。
 その血痕は昨日の夕にはなかった。となれば二つの血痕は今日落ちた可能性が高く思われるが、無いとは言わないまでも、同じ日、同じ地下通路の両端で血を流す人間が二人もいるだろうか。また階段を下った通路部分に一滴の血痕も無かったことも奇妙である。血が酸化し黒くなるまでの時間はおおよそ数十分というから、階段に血痕が付いてから少なくとも数十分経、ふたたび反対の階段で血が落ちたわけだが、階段に落としているのにより距離の長い通路に落ちていないのも腑に落ちない。
 血が流れている以上、これを面白がっては気の毒なのだが、私は歩きながら、この不思議について考えていた。

〇永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』読了。

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