〇晴れ。今年の六月は土曜日から始まった。つまり二日後即ち月曜日の私の誕生日が平日で祝えない、という理由で今日は焼肉を食いに行った。折しも仏滅であり、また誕生日前に祝いの言葉を受けると凶事に遭うという迷信を信じた結果、ただうまい焼肉を食っただけだった。
〇伊吹亜門『雨と短銃』読了。『刀と傘』につづく尾張藩公用人の鹿野師光が主人公のシリーズ二作目。とはいえ時系列的には『刀と傘』の前日譚にあたり、前作バディの江藤新平は登場せず、舞台も明治ではなく幕末である。
本作で師光は、薩長同盟成立に奔走する坂本龍馬から依頼を受け、薩摩と長州の間で起きた不可解な殺人事件の解決に向けて調査に乗り出すという筋書。血風吹き荒ぶ血腥い京都を舞台に、師光は維新の立役者となる者たちと関わり合い、事件解決に向けて動くのだが、どの登場人物も腹の底に得体の知れないものを抱えた妖人であり、彼らとのやり取りが面白いことこの上ない。
本作も前作『刀と傘』につづくミステリ仕立ての歴史小説である。主人公を筆頭に架空人物と史実の人物とが入り混じり物語が展開されていくが、大まかな歴史の流れに関しては史実通りを貫いている。とすれば当然師光の受けた依頼は達成され、事件は解決されなければならないのだが――肝心の中身、結末の情景は――単純な謎解きでは終わらない。