〇晴れ。椿事があった。
午前、K電力を名乗る男から電話が掛かってきた。
『おたくの電気メーターの交換時期が来ている。午後に伺わせてもらうから、交換ついでに家の配線も確認する』
内容は上のようなことである。不案内にも、私は電気メーターの交換時期についてまったく知らなかったから、とりあえず受けてしまった。
しかし、近ごろ連続した盗難事件の事もある。家の配線を確認するという言葉はどうにも臭うし、また、相手が携帯電話から掛けてきているというのも疑惑を深めた。
そこでK電力に確認してみると、うちのメーター交換の予定はないという返事が来た。
予定にない――ならば、K電力を名乗りメーター交換に来るという内容は嘘になる。しかし、内容は嘘でも、午後になれば何者かが来る。
次に警察に相談してみた。――上のような経緯で、どうやら午後にいかがわしい輩が来るらしい、どうすべきか?
警察からの返事は明快であった。
『毅然と断ってください。家に入れないでください。警察に相談した、ハッキリ断って帰らせるよう指導を受けたと言ってください。それでも帰らなければ、直ぐに110番をしなさい』
動揺していたこともあり、この言葉には相当勇気づけられた。
相手が無茶な営業であれ詐欺師であれ、警察から指導受けたという大義名分があれば恐れることもない。――
はたして、午後になるとその男は来た。
年頃は30代後半、人当たりの良さそうな声で挨拶をしてきた。一見整った身なりをしているが、よく見れば髪には編込みが、ワイシャツには皺が、安物らしいスラックスは丈が合っていなかった。
当然、信用に値しない。
男の言によれば、彼は新電力の営業であり、メーター交換云々はオペレーターの勘違いということだったが、もはやそういった事情を聞く段は過ぎていた。
私が、電力の営業は不要である事、警察から帰らせるよう指導を受けている事、これ以上留まるなら直ちに通報する事を告げると、男は去った。
取り留めもない記録だが、以上、今年最初の椿事である。
〇上述の最中に知ったことだが、近ごろ同様の通報や問い合わせが頻発しているという。そもそも春という季節はこの手のいかがわしい輩の活発になる時期だが、まさか自分の身に降りかかるとは。