〇雪のち曇り。朝から雪が降っていた。路を歩けば家の屋根や通りを行く車の上に雪が載っていたから、それなりの量の降雪である。往来を行く人々は上着の襟に顔をうずめ、ポケットに両手を突っ込んで寒さにふるえていた。私も同じである。
寒さに耐えて歩いていたら、ふと視界に見慣れない恰好をした二人組が映った。おそらく親子だろう。若い母親と小学生くらいの男の子が並んで歩いていた。
母親はカジュアルスーツに身を包み、隣で歩く男の子はままごとのようなスーツを着ている、と、そこで思い出した。今日は、地元の小学校の卒業式の日である。
スーツというのは存外寒い。ものによるのだろうが、概して防寒機能に乏しく、基本は上に厚着して寒さを凌ぐのだが、記念日ゆえの不用心か、あるいはゴミや着崩れを厭ったのか、私の見かけた親子は薄い上着を一枚羽織るだけで、甚だ防寒効果は薄いように思われた。
そんな親子の様子を見、卒業式の会場はさぞかし寒いことだろう、と私は考えた。今日の式では、だれもがふるえながら卒業を祝い、その寒さを以て永く記憶に留めるにちがいない。