〇晴れ。昨夜に続き強い風の吹く日だった。
気象予報によると所により春一番とされた。春一番といえばキャンディーズの輝かしい春への希望を歌った曲のイメージがあってどこか朗らかな印象を抱くが、現実の春一番はその朗らかさの一片もない暴風である。
春一番。あるいは春の嵐やメイストームなどと呼ばれ、こちらのほうが実感に近い。
〇「春の嵐」でふと思い出したが、ある詩人はその詩だか手紙だかで恋愛を「恋の嵐」と呼び、意中の人にフラれたのを「あの人は私の内面に吹き荒れる恋の嵐を恐れた」と書いた。なるほど、恋愛も抱かれるイメージは優しく朗らかなものであるが、その実感は――特にそれが叶わぬものであるときは――荒れ狂う風のようであるに違いない。